ロゼワインと聞くと、どんなことをイメージするでしょうか?
- 「甘い気がする」
- 「お花見シーズンのお酒」
- 「かわいい」
こんな風に思っていませんか?
これらのイメージを覆す「タヴェルワイン」について、5分ほどでご覧いただける内容です。ぜひ最後までご覧ください。
タヴェル(Tavel)とは?

フランス南部にロゼワインだけを作ることが許された「タヴェル」というワイン産地が存在します。
タヴェルは紀元前5世紀ころからぶどう栽培がされていたと言われ、ロゼワインにおいては1300年頃からはとても高い評判を得ていました。フィリップ4世をはじめとする歴代の教皇たちに好まれており、さらにはルイ14世などのフランス国王の食卓までも彩ってきたロゼワインです。
古い歴史と高品質なロゼワインを作ってきた実績のあるワイン産地で、1936年にはフランスで初めてロゼワイン産地としてA.O.C.認定されました。
Appellations d’Origine Contrôlée(アぺラシオン・ドリジーヌ・コントローレ)
原産地統制名称。有名ワイン産地を詐称するワインが市場に溢れたことから、1935年に制定された規定。生産地域の地理的範囲やぶどうの種類、醸造方法などを法律で規定したもの。
参照:日本ソムリエ協会教本 2016
タヴェルワインの紋章

タヴェルワインにはボトルに「T」があしらわれた紋章が入っていることがあります。これは「フランスで最初にロゼワインのA.O.C.を獲得した産地」や「ロゼの王様」としてのシンボルマークだと言われています。

タヴェルワインの特徴
タヴェルの地理と気候
タヴェルは地中海性気候の影響を強く受けるフランス・ローヌ地方南部にある人口1500人ほどの村です。
夏の降水量が少なく、温暖で乾燥した気候はぶどうを病害から守り、日照量も多いため、品質の高いぶどうが収穫できます。また、ミストラルと呼ばれるアルプスから来る冷たい北風が年間150日も吹き付けることで、さらに乾燥し、暑くなりすぎることもありません。
この地中海性気候の恩恵がタヴェルの力強さや深い味わいに寄与していると考えられます。
ケッペンの気候区分における温帯気候の一種。夏は高温乾燥で、冬は温暖で多湿な気候のこと。
タヴェルの土壌
タヴェルの土壌はガレ・ルレと呼ばれる丸石や石灰の礫などが存在し、対岸である「シャトー・ヌフ・デュ・パプ」と似た土壌だと言われています。

タヴェルやシャトー・ヌフ・デュ・パプに見られるゴロゴロと小石が転がる土壌は水はけがよく、日中に石が温められることで、夜間の保温に役立ちます。この土壌はぶどうの成熟に良い影響を与え、高品質なワイン作りを支えています。
タヴェルで栽培される主なぶどう品種
タヴェルでは13種類以上の様々なぶどうが栽培されています。

主にはグルナッシュ、シラーをはじめとしたサンソー、カリニャン、ムールヴェードルなどの黒ぶどうとクレレット、ピクプール、ブールブランなどの白ぶどうが栽培されています。
主な白ぶどう | 主な黒ぶどう |
---|---|
クレレット ピクプール ブールブラン | グルナッシュ シラー サンソー カリニャン ムールヴェードル |

タヴェルの醸造方法
タヴェルでは「セニエ法」と呼ばれる醸造方法で、色や味わいの濃いロゼワインを作るパターンが多く見受けられます。

赤ワインの作り方と似ているセニエ法では、ぶどうの果皮や種と接触させながら発酵を進めるため、ポリフェノールなどのタンニンや黒ぶどうの風味がワインに充分抽出されることが特徴です。
ぶどうの完熟度を活かした骨格と、収斂性をわずかに感じるような辛口のロゼワインに仕上がります。
タヴェルワインの魅力
タヴェルワインの魅力は
- 一般的なロゼワインよりも濃い味と色調
- お肉料理にも合わせやすい辛口
- スパイスの風味など複雑な香味
- 長期熟成にも耐えうる
しっかりとした骨格とボディを備えるタヴェルは、ロゼワインの印象を変えてくれるワインのひとつです。タヴェルはコート・デュ・ローヌにおいて、最も気温の高いアぺラシオンのひとつと言われています。
高い気温と日照量を誇り、ミストラルがもたらす冷気と乾燥を享受した環境で作られるぶどうは成熟し、風味豊かに仕上がります。

そのため、タヴェルのロゼワインはしっかりとした骨格とボディを持ち合わせています。また、辛口のロゼワインなので、シャルキュトリーやシンプルな味付けのお肉料理などと好相性。食事とも合わせやすい、いわゆる「フードフレンドリー」なワインです。
食事に合うワインや料理と楽しみたくなるワインに使われるワイン用語。
タヴェルワインの楽しみ方と
おすすめのペアリング
飲み頃の温度
ワインは温度によって、香りや味わいが変わります。
赤ワインはあまり冷やしすぎると渋味を強く感じすぎてしまいますし、白ワインにおいては温度を下げることで酸味をより爽やかに感じることが出来ます。
タヴェルワインのおすすめ温度は15度。

淡いロゼワインは白ワイン同様に冷やして飲むことが多いですが、赤ワインに近いロゼワインのタヴェルはほんのりと冷やした温度(15度前後)で飲むことで風味や深みを感じやすくなります。
15度は「すこし冷たいかな?」と感じる程度です。冷やし過ぎてしまうと、複雑な風味や味わいを感じにくくなるので注意が必要です。
タヴェルを飲むときは「温度」に注目して、さらに美味しく楽しみましょう。
料理とのペアリング
タヴェルは様々な料理との相性が楽しめるワインです。ここでは2つのおすすめのペアリングを紹介します。
鴨むね肉のロースト
鴨肉の魅力はなんと言っても「脂」です。じっくりと加熱された鴨肉のローストは柔らかく、こってりした脂が旨味を演出しています。

タヴェルワインの特徴であるタンニンが鴨肉の脂のキレを良くすることで、食事の手が進みます。また、スパイスの香味が鴨の風味を引き締めることでお互いの味わいを高めあう素晴らしい組み合わせです。
鴨むね肉はフルーツソースを用いることも多い食材です。クランベリーやカシス、オレンジなどのソースとタヴェルワインの風味が同調し、最高のペアリング体験をもたらしてくれます。
えびの生春巻き
パクチーや魚醤の効いたえびの生春巻きもタヴェルワインと合わせてほしい料理のひとつです。

「爽やかに合わせたいけれど、白ワインではエスニックのパンチに負けてしまう…」「赤ワインではえびや野菜の繊細な味わいが隠れてしまう…」そんな時にタヴェルワインはぴったり。タヴェルワインはしっかりした骨格と風味が豊かなため、香味の強いエスニック料理とも好相性です。
さらに、優しい辛味と酸味と甘さが調和するスイートチリソースと、赤い果実のジューシーさとほどよいタンニンを持つタヴェルワインとの絶妙なバランスは試さないともったいないほどの組み合わせです。
タヴェルワインの選び方
「タヴェルワインはたくさんあるから何を選んだらいいのかわからない」
そんな方にソムリエがおすすめするタヴェルワインを2つ紹介します。
タヴェル・ロゼ・ラ・ダム・ルス/ドメーヌ・ド・ラ・モルドレ
Tavel Rosé La Dame Rousse
Domaine de la Mordoree


ドメーヌ・ド・ラ・モルドレは、1986年にフランシス・デロルムによって設立されました。その後、1989年よりフランシスの長男であるクリストフが中心となってワイナリーを牽引するようになると、わずか10年ほどで南ローヌのトップドメーヌの一員として知られるようになりました。ロバート・パーカーは、『ワイン アドヴォケイト』で、2001VTの「シャトーヌフ・デュ・パプ・ラ・レイヌ・デ・ボワ」に100点満点を献上し、絶賛しました。『ワイン アドヴォケイト』のタヴェル、リラックのトップスコアはそれぞれ93点と94点ですが、タヴェルではモルドレの「キュヴェ・ド・ラ・レイヌ・デ・ボワ」が2011~2017VTまで連続して93点を獲得しており、トップタイスコアを記録。
引用元:ワインの稲葉‐ドメーヌ・ド・ラ・モルドレ生産者情報より
タヴェル・ロゼ / ギガル
TAVEL ROSE E.GUIGAL
コート・ロティ、コンドリュー、エルミタージュなど北部ローヌを代表する多数のアペラシオンを所有し、名実共にローヌワインを代表する生産者として先頭を走り続けるギガル。その歴史は意外にも浅く、メゾン創設からわずか半世紀にて高い地位を築いています。特にコート・ロティの「ラ・ムーリンヌ」「ラ・ランドンヌ」「ラ・テュルク」という3つの自社畑は、「ギガルの3つ子の兄弟」と称され、ワイン・アドヴォケイトにて100点を連発し、ギガルの名声を確固たるものへと押し上げています。不動の地位を誇るローヌの生産者が手掛けるロゼワイン。フローラルかつフルーティーなアロマに、肉厚ながらもエレガントな味わいが魅力。
引用元:ENOTECA Online

おわりに
食事に合わせやすい辛口のロゼワイン「タヴェル」
その豊かな風味と味わいは、タヴェルの気候や土壌など様々な要因から醸成されます。タヴェルワインは食事との相性も素晴らしいワインです。特別な日だけでなく、普段の食事に合わせて楽しんでみるのもおすすめです。
ぜひタヴェルワインの奥深い世界を体験してください。